不動産会社が建築を始める時代に、工務店はどう動くべきか

物件王編集部

不動産仲介を検討している工務店様は多い一方で、実はその逆の動きも起きています。
不動産会社が、自ら建築の機能を持ち始めているのです。

今回は、不動産会社が建築へ染み出しているという業界の動きを紹介しながら、この流れの中で工務店が今すぐ動くべき理由を考えていきます。

不動産会社が、建築の子会社をつくり始めている

中古物件を紹介するメディアを運営する、ある不動産会社は、建築のリノベーション専門会社を子会社として設立しました。物件の仲介から、購入後のリノベーションまでを、グループ内でワンストップに対応する体制を整えるためです。

この子会社は、リノベーションに使う建材を厳選し、工程管理をIT化することで、原価と工期を短縮し、コストパフォーマンスの良い改修を提供していく考えを示しています。(出典:リフォーム産業新聞2026年7月13日号)

つまり、これまで「不動産は不動産、建築は建築」と分かれていた業界の垣根が、不動産会社の側からも崩れ始めているということです。

「新築」は難しくても、「リノベーション」なら参入しやすい

ここで押さえておきたいのは、不動産会社が参入しているのは新築ではなく、リノベーションだという点です。

新築住宅を一から建てるには、設計から施工管理、職人のネットワークまで、長年蓄積された専門性が必要になります。不動産会社が一朝一夕に参入できる領域ではありません。

一方、すでにある建物を改修するリノベーションは、大工や職人への発注・管理の体制さえ整えられれば、新築ほどのハードルなく取り組むことができます。実際、この事例のように、子会社という形でリノベーション機能を持つという選択は、不動産会社にとって現実的な一歩だと言えます。

これは、工務店が不動産に参入する場合とは、少し事情が異なります。工務店の場合、宅地建物取引業の免許取得と宅建士の設置という、制度上のハードルはそれほど高くありません。ただし、地域の物件情報網や相場観といった実務上のノウハウは、免許を取得しただけでは身につかず、実務経験を積み重ねる必要があります。

つまり、双方とも「制度上は参入しやすいが、実務のノウハウ構築には時間がかかる」という共通の課題を抱えていると言えそうです。だからこそ、ノウハウの蓄積に時間がかかる分野ほど、早く始めた者が有利になります。

なぜ、不動産会社側からもワンストップ化が進むのか

理由は、工務店が不動産に染み出す理由と、実はよく似ています。
不動産の仲介だけでは、物件を紹介した時点で収益が確定してしまい、そこから先の関係は途切れがちです。しかし、購入後のリノベーションまでグループ内で担えれば、一人の顧客からより長く、より多くの収益機会を得られます。

さらに、リノベーション前提の中古物件は、購入希望者にとって「この物件を、実際どこまで改修できるのか」という不安がつきものです。ここに建築の知見を持つ会社が関わることで、物件探しの段階から「改修後のイメージ」まで一貫して提案でき、顧客の意思決定を後押しできます。

顧客から見ると、何が変わるのか

こうした動きは、顧客(住まい手)の目線に立つと、より分かりやすくなります。
これまで、中古物件を購入してリノベーションしたい人は、まず不動産会社で物件を探し、購入後に改めてリノベーション会社を探す、という2つの窓口を渡り歩く必要がありました。物件の間取りや構造の制約を、リノベーション会社に相談して初めて把握する、という順序になりがちで、「思っていたような改修ができない」という行き違いも起こりやすい構造でした。

不動産と建築が一体化した窓口であれば、物件を探している段階から「この物件なら、こんな改修ができます」という具体的なイメージを示してもらえます。購入するかどうかの判断材料が、価格や立地だけでなく、改修後の暮らしまで含めたものになるため、住まい手にとっては、より納得感のある意思決定がしやすくなります。

これは、工務店が不動産の窓口を持つ場合にも同じことが言えます。土地を探している段階から、建築の知見をもとに「この土地なら、こんな家が建てられます」と伝えられることは、住まい手にとって大きな安心材料になるはずです。

「どちらの窓口を先に持つか」が問われる時代に

この動きが示しているのは、業界の主導権争いが始まっているという現実です。

  • 工務店が不動産の窓口を持てば、土地探しの段階から顧客と接点を持ち、そのまま自社建築につなげられる
  • 不動産会社が建築の機能を持てば、物件探しの段階から顧客と接点を持ち、そのまま自社のリノベーションにつなげられる

どちらも狙っていることは同じです。顧客が最初に相談する窓口になり、そこから継続的な関係を築くことです。違うのは、どちらの入口から関係を始めるかという点だけです。

このことから見えてくるのは、「建築か不動産か」という業種の垣根そのものが、これからますます意味を持たなくなっていくという事実です。今、動いていない会社は、気づいた時には、顧客との最初の接点をすでに他社に取られている、という状況になりかねません。

「今はまだ早い」と思っていると、出遅れる理由

「うちの地域では、まだそこまで進んでいない」と感じるかもしれません。しかし、それこそが今、動くべき理由です。

既存住宅の取引・リフォーム市場は、2023年の16.9兆円から2035年には20兆円まで拡大する見通しが示されています。(出典:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」2026年3月)

市場そのものが大きくなっている今は、後から参入しても十分にチャンスがある段階です。しかし、この流れが業界の常識になった後では、状況は変わります。すでに顧客との関係を築いている競合が多数存在する中からのスタートになり、今よりずっと難しい戦いを強いられることになります。

さらに、不動産と建築はどちらも地域に根ざしたビジネスです。全国チェーンが一気に席巻するような業態ではなく、地元での信頼関係がものを言う世界です。だからこそ、同じ地域で、自社より先に不動産の窓口を構えた工務店が一社でも現れれば、その会社が地域の顧客との最初の接点を握ってしまいます。 一度築かれた信頼関係は、簡単には覆りません。

「気づいた時にはもう遅かった」とならないために、市場が拡大し、競合がまだ少ない今のうちに動き出すことが、これから何年も先の経営を左右します。

まとめ

不動産会社が建築の機能を子会社という形で持ち始めているという動きは、「建築か不動産か」という業界の垣根が崩れつつあることを示しています。双方が相手の領域に染み出そうとしている今、大切なのは、どちらが先に顧客との最初の接点を持ち、関係を築けるかという点です。

市場はまだ拡大の途中にあり、参入企業も少しずつ増え始めている過渡期です。この段階で動き出すか、業界の常識になってから動き出すかで、その後に築ける関係性は大きく変わってきます。工務店にはすでに建築という強みがあります。この強みを土台に、不動産という新しい窓口を、できるだけ早く持つことが、これからの時代に選ばれ続けるための一歩になるのではないでしょうか。

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